プロポーズ エピソード紹介集。朝日が美しい山の頂上でプロポーズ
彼と私はハイキング仲間として知り合いました。
元は友人達がハイキングサークルなるものを作っていて、そこに私も誘われて参加した事が始まりです。
最初はハイキングに慣れずに筋肉痛になったり、バテたりして皆の足を引っ張っていました。
その際に丁寧に教えてくれたり、リードしてくれたのが彼でした。
いつも最後尾を歩いていた私の事を気にかけてくれた彼。
それがきっかけで、彼とは個人的にデートをするまでの仲になり、お付き合いを開始しました。
彼は元々アウトドアが好きだった事もあり、ちょっとした連休には遠出をして遊ぶ事もしばしばあったんです。
その中でもハイキングが一番好きで、春や秋になると一緒に山へ登って山菜を取ったり、昆虫や珍しい草木の観察をしたりする事が一番の楽しみのようでした。
私も彼から山のことを教えてもらって少しずつ覚えていく事に、楽しみを覚えたものです。
とある日、付き合って四年目の記念日に合わせて、一緒に登山をしないかと誘われたんです。
「今年の記念日はさ、一緒に登山しない?」
「登山?ハイキングじゃなくて…?」
「そう、登山。ちゃんと俺がリードするからさ?」
「……うん、良いよ!チャレンジしてみる」
「やった!!じゃあ会社に有給申請しておかないと♪」
軽いハイキングしか経験の無かった私は、登山と聞いて心配になりましたが、彼が一緒に居るのなら大丈夫だろうと思い登山に参加する事にしました。
登山の当日は記念日の前日で、頂上で一泊したら朝日を見ようという計画を立てているようでした。
それまでの間に私は体力を付ける為、彼と一緒にジョギングをしたりして準備にいそしみました。
登山当日は早朝に家を出て、彼の車で山の近くまで行く事に。
到着してからは、忘れ物がないかをしっかり確認してから登山を開始。
途中私が滑って転びそうになったりしましたが、彼がちゃんとリードしてくれたので思ったよりもスムーズに登る事が出来ました。
頂上付近に到着してからは近場に小屋があったので、そこに寝泊りする事に。
外に出て夜空を見上げると、満天の星がそこら中にあり、物凄く感動しました。
手を伸ばしたら星が掴めそうなくらい近くに感じ、お互いに黙って夜空を見上げていました。
チラリと隣を見ると、彼が嬉しそうに星を眺めていて、頑張って一緒に登れて良かったとシミジミ感じたものです。
朝は早くから起きるという事もあって日付が変わる前に寝る事にしました。
お互いにウトウトし始めるまで飽きずに色んな話をしていましたが、気付いたらぐっすり眠れていて、二人とも早朝に起きることが出来ました。
朝はとても寒いのでしっかりと着こんでから外に出たのですが、まだ朝日は昇っておらず空は明るい紫色になっていました。
美しさに感動してぼんやり眺めていると、朝日が昇り始めてきました。
その光景はもう言葉に出来ない程素晴らしくて、開いた口が塞がりませんでした。
朝日という物はこんなにも迫力があって神聖で美しいのかと、ただただ登ってくる朝日を見つめ続けていると、彼が手を握ってきました。
彼の方を向くと、彼は私をじっと見つめてこう言ったんです。
「結婚してくれない?」
「……え?」
「結婚して欲しいんだ。俺を君の夫にしてくれませんか?」
「…え、えっ?」
あまりにも突然の事だったので、ぽかんとしてしまいました。
首を傾げたまま何度も聞き返していると、その私の姿が面白かったのか彼は笑って抱き締めてきたんです。
「今日さ、プロポーズするつもりで登山に誘ったんだ。記念日に一番綺麗な朝日を一緒に見てプロポーズするっていうのが俺の昔からの夢でさ。結婚したい人が出来たらやりたいって思ってたんだ。」
「…それが、私?」
「そう。だから、結婚して?」
何故か自信満々に言ってきた彼の背中に手を回すと、肩が強張っていて本当は緊張しているんだと分かりました。
それに気付いて彼をどうしようもなく愛しく感じ、自然と笑みが零れて頷いていました。
「うん、結婚しよ!」
「ほんと…?うっわ、やったー!!!」
返事をすると彼はあまりにも嬉しかったのか、私を抱き上げて何度も『やったー!』と叫んでいました。
まさか朝日の前でプロポーズされるとは思っていませんでしたが、来年も再来年も記念日にはこの山に登ろうと二人で誓った日でした。