プロポーズ エピソード紹介集。パティシエの彼から甘いスイーツとプロポーズ
小さい頃から甘い物が大好物だった私は、ご飯を食べるよりも甘い物を食べる事に重点を置いた生活を送ってきました。
ちゃんとした食事はするけど、それでも甘い物を食べたいが為に胃袋にスペースを空けておくみたいな感じだったんです。
原因はスイーツ作りが上手だった母にあるでしょう。
学校から帰ると毎日のように色んなスイーツが冷蔵庫に入っているという生活でした。
このスイーツ好きは社会人になり独り立ちをしても変わる事はありませんでした。
しかし私は致命的にスイーツ作りが下手で・・。
結果、ケーキ屋さん巡りをするようになりました。
家の近くにあるケーキ屋さんは最近出来たばかりでしたが、いつ行っても結構な長さの列が出来ていたので入れた試しがありませんでした。
色んな時間にお店の前を通ってみた結果、閉店間際が一番空いている事を知りました。
仕事後自宅でお風呂に入り、閉店間際になるまで待ってそのお店に行ってみました。
お店に着くと店閉まいをし始めているところでした。
出入り口でオロオロしている私に気付き、パティシエの格好をした方が手招きしてくれたんです。
中に入ってみると、もう何とも言えない甘い香りが店中に漂っていました…。
「もしかしていつも店の前を通ってる人・・ですか?」
「……へ?あ、はい。」
まさか毎日通る度に中を伺っていた事に気付かれていたとは思いもしませんでした。
「あ、従業員からしょっちゅう店の前で商品見に来てくれてる人がいるって聞いて。もしかしたらと思って・・。」
「あ…なるほど。バレていたんですね…。いつ来ても混んでるから、空いてる時間を探そうと思ってまして…」
「あぁ、だからこの時間に…。せっかくだけど、今3つしか残ってなくて・・」
「それ!それ全部下さい!!」
三つしかないという言葉に慌ててそういうと、彼は笑ってその三つを袋に入れてくれました。
会計をしようとすると、『どうせ俺が食べるしかなかったから、大丈夫です。この時間に来てくれたら、またご馳走します。』と笑顔で言われました。
どんなに私が粘っても、『お金はいいから、他のお客さんには言わないでね。』とお金は受け取ってくれませんでした。
それから毎日店閉まい間際に立ち寄っては、残ったケーキを厨房内で御馳走になっていました。
(私だけこんなラッキーでいいのかな)と疑問に感じていましたが、ご好意に甘えました。
最初はケーキにしか興味が無かったんですが、気付いたら彼に対する興味の方がケーキに勝っていました。
会う日が増えていくにつれ、お互いに意識しあっている事を自覚し、私からの告白でお付き合いする事に。
彼はそのお店の二階に自宅を構えていたので、彼の部屋も甘い匂いが漂っていたのが印象的でした。
しばらくお付き合いを進めていった頃、彼がパティシエにとって重要なコンクールにオリジナルのケーキを出展する事になりました。
彼がデザイン考案に専念したいという事で、コンクールが終わるまで会わない事にしたんです。
一ヵ月後コンクールの発表当日、彼から連絡が入り最優秀賞を貰ったと聴き、私は自分の事のように喜びました。
そのまま彼の店に行くと、その日はお店を閉めていた事もありゆっくりと話す事が出来ました。
どんなケーキを作ったのか聞くと、なんと彼は同じ物を作ってくれたようで、私の目の前に出してくれたんです。
すっごく可愛らしいケーキ。
「これだよ、作ってたの。〇〇〇ちゃんをイメージして作ったんだ」
「…え?これ?私をイメージして作ってくれたの?」
「そうだよ、〇〇〇ちゃんみたいなケーキを作ろうって決めてたからね。あと、最優秀賞を貰ったらコレを渡そうと思ってたんだ…受け取って欲しい」
そういってケーキの隣に置かれたのは、キラキラと輝く指輪でした。
「ケーキを美味しそうに食べる〇〇〇ちゃんが好きだし、それだけじゃなくて君の人間性も大好きなんだ。ずっと一緒に居られたらって思ってる…だから、結婚してくれないかな。」
「……ほんとに…?ほんとにいいの?」
「当たり前だよ、そうじゃなかったら〇〇〇ちゃんをイメージしたケーキなんて作らないよ」
そう言われて、私は何度も『宜しくお願いします。』と言いながら頷きました。
自然と溢れる涙を抑えられずに、俯いたままケーキを食べつつ優しく頭を撫でてくれる手にまた涙が溢れました。
甘いケーキと、甘いプロポーズと、甘いこの人に包まれた未来は甘い物が大好きな私にとってなくてはならないものになりそうです。