プロポーズ エピソード紹介集。薔薇に囲まれた温室で彼からの贈り物
私と彼が出会ったのは友達に誘われて行ったクラブでだった。
クラブに初めて行った事もあり、挙動不審になっていたと思うし、正直今思い返しても顔が強張っていたなと思う。
友達は知人達が居るからと席に案内してくれたけど、結構な数の男性達が居て、人見知りをする私は大混乱だった。
そんな私に気付いてくれた人が居て、
「大丈夫?うるさくて落ち着かないよね」
そう声をかけてくれた。
連れてきてくれた友達は他の友人達とフロアに踊りに行ってしまったし、どうしたらいいか分からなくて頷くだけにしておいたら、彼が手招きして自分の隣の席をポンポンと叩いたのだ。
見ず知らずの人という事に警戒はしたけど、足も疲れていたので隣に座ると、彼は自分の携帯にイヤホンを差して私に差し出してきた。
「これ付けて音楽聴いてたらいいよ!」
「え…でも…」
「気にしないでいいから。」
周りの音に声がかき消されそうになりながら言葉の通りにイヤホンを装着すると、オルゴールの曲が流れてきた。
最初は小さな音だったけど、少しずつ音量を上げてくれたみたいで耳がそのオルゴールの音だけを拾うようになった。
すると不思議と落ち着いてきて、隣に座る彼と話をしたくなった。
携帯のメール画面を開いて文字を打ち込んでみる。
『ありがとう、だいぶ落ち着きました。携帯占領してごめんね?』
画面を彼に見せると、小さく笑いつつ私の携帯画面を押し始めた。
『いえいえ、こういう場所って慣れないと居心地悪いでしょ。俺もほとんど来ないんだけど、今日は強制連行 笑』
そう打たれた文字に、私と同じ境遇で思わず笑ってしまった。
それから携帯画面の中で会話をしてるうちに、解散する頃にはすっかり意気投合しちゃって…。
あまり自分からはしないけど、勇気を出して連絡先を聞くと快く教えてもらえた。
それから毎日少しずつ連絡を取り合う仲になっていって、気付けばお付き合いする関係になっていった。
彼を知って分かった事は、クラブとかに行く事はあまりしないけど、バイクが大好きで大切にしているバイクが3台ある事。
そのバイク達で休日はツーリングをしたり、ちょっと遠出をして海を見に行ったりしている事。
この時期は海に行くのが楽しいという事。
彼のバイクに乗せてもらって海に行った事もあった。
私自身は花を育てるのが趣味で、自宅のベランダには小さな庭が出来ている事とかを教えた。
たまに旅行しに行く事もあった。
北海道の花畑を見に行った時は、私が大興奮しているのを見て笑われたり…。
あれはちょっと恥ずかしかったな。
四年半位経った頃、彼が植物園に行こうと誘ってくれた。
実はこれまで花好きなわりに植物園に行った事はなくて、その事を話すと『連れてってあげるよ』と約束していたのを覚えてくれてたみたい。
嬉しくて嬉しくて、早く当日にならないかなって楽しみで仕方なかった。
当日は彼のバイクで行く事に。
バイクという事もあって思っていた時間よりも早く到着し、園内に入ると人気(ひとけ)が全然無い…。
そんなに人気無いのかな?ってちょっと寂しく思ったけど、貸切みたいでちょっと嬉しかったり。
一通り園内を歩き回った後、彼が、
「はい、ここからはサプライズがあるので目隠しをします!」
「え!?サプライズ?め、目隠し?」
「はい、目隠しです!内容はサプライズなので秘密です!!」
そういいながら、私の両目を彼の両手で塞いだ。
彼の言う通り抵抗せず、誘導されるまま歩く。
するとある時から私の大好きな花の匂いが…。
彼がソッと手を離たので目を開けてみると、そこは温室になっていた。
だけど何よりも驚いたのは、温室中に飾られた色とりどりの薔薇の数だった。
私が唖然としていると彼が後ろから抱き締めてきて、
「今日はここ貸切にしてもらってた。どうしても言いたくて」
「…な、にを…?」
「結婚して下さい、って。」
「…結婚…私、と…?」
「〇〇と俺が」
そういうと、私の目の前に指輪が差し出された。
目の前の光景があまりにも凄くて、これを準備してくれた事が嬉しくて、一度だけ頷くと彼の前に手を出して指輪を嵌めてもらった。
彼は成功した事に嬉しそうで何度も抱き締めてくれて…。
私は彼と一緒に生きていこうと、そう思えた日でした。