プロポ―ズエピソード笙。思い出の神社で・・
高校入学と同時に私の地元へ引っ越してきた彼は三年間一緒のクラスで、特に目立つ存在というわけでは無かったけれど、いつも静かに本を読む姿が印象的だった。
家も近かったからか自然と話をする機会も多くて、好きになるのにそう時間は掛からなかった。
高校三年の時、お互いの家の近くにある神社で告白をされた。 {
話を聞くと、彼も三年間私の事を好きでいてくれたけど、告白する勇気がなかなか持てなかったみたい。
私は勿論OKして、大学卒業後も社会人になった後もお互いのペースでお付き合いを続けていた。
お互いにそろそろ20代後半目前になってきた頃、彼の転勤が決まってしまった。
長期転勤な上に、もしかしたら戻ってこれないかもしれないという話で、遠距離になる事への不安が頭から離れなかった。
それから少し経ち、彼から「またあの神社に行かない?久しぶりにさ」と誘われた。
あの時告白された時とほぼ同じ時期に来たからか、高校時代に戻ったような気がする。
お賽銭を入れて真剣にお祈りをしている横顔を見て私は、 「一緒についていきたい…。でも、それって彼はどう思うのかな…?」
そんな事で頭がいっぱいになったまま、彼の方から珍しくおみくじを引こうと言ってくれた。
100円を入れておみくじを引こうと箱の中に手を入れたら、一枚しかおみくじがない事に気付いた。
こんな事初めてで彼の分が無くなってしまうからと、最後の一枚を取った後巫女さんに補充して欲しいと言いに行こうとした。
すると優しい表情をした彼が、「それ見てからでも良いよ、最後の一枚だから大吉以上かもしれないしさ」と言ってきた。
言われるまま封を開いたおみくじには、
「○○ちゃん、どんなに考えても悩んでも同じ結論しか出せませんでした。後悔はさせないから、僕と結婚してください。」
と、書かれていた。
呆然としてしまった私が顔を上げると、彼は高校時代私に告白してくれた時と同じ表情をしていた。
その表情でやっと、サプライズが苦手な彼が準備してくれた精一杯のプロポーズだと分かってすぐに言葉が出なかった。
返事をしない私を見て、どんどんと眉が下がってきた彼を見て思わず抱き締めていた。
「後悔なんてしないから、○○君と結婚したいです。」
そう答えると、力一杯抱き締め返してくれた彼の手が少し震えていて、胸がいっぱいになってしまって涙が零れた。
その後彼から指輪を左手の薬指に嵌めてもらうと、神社の神主さんや巫女さん達から祝福してくれた。
そういえば居るのが私達だけじゃなかったのを思い出して、お互いに照れちゃったり…(>ω<*)
次にこの神社へ来る時は、結婚式の時になりそう。