エピソード紹介集。初めて本音で言い合えた入籍日当日
私は自分に自信が無く、いつでも自分の意見よりも彼の意見が大事だと考えていました。
なので入籍日まで、そんな私の態度が大切な人を傷つけていることを知りませんでした。
これは、そんな私たちの2018年12月24日のおはなし。
私たちは入籍より先に結婚式を済ませていました。
結婚式後に籍を入れようと話しながら、式からすでに1カ月は過ぎていました。
いつ入籍するんだろう?
頭の中からその疑問が消えたことはなかったけれど、私は彼に切り出せずにいました。
彼は彼で考えていることがきっとあるから、私はそれに従えばいい。
友人たちが手紙や贈り物を彼の名字で送ってきてくれるその行為にすら、私は苦しい気持ちを感じていました。
クリスマスイブの日、早めに帰宅してくれる彼のためにパーティ仕様の夕飯を作って待っていました。
しかし約束の時間を過ぎてもなかなか帰ってきません。
心配と不安、そして約束を破られたことに少し憤りを感じながら待っていました。
約束の時間を1時間ほど過ぎたころ、ようやく彼は帰宅しました。
思うことはたくさんありましたが、表現するのが苦手な私は不安な思いをすべて飲み込み、笑顔で迎えました。
「おかえりなさい。」
そう言った瞬間、彼は肩を震わせて下を向き、涙を流し始めました。
彼の泣いている姿を初めて見た私は、どうして良いかわからず「ごめんね、どうしよう、ごめん」と繰り返しながら彼の背をさすりました。
ようやく落ち着くと、彼は「なんで謝るの?なんで遅くなったのに責めないの?なんで入籍のこと何も言わないの?なんで主張しないんだよ?」とまくしたてるように言いました。
彼は入籍のことはあえて私から言い出すまで、触れないようにしていたのです。
私はこの時まで、彼の思う通りにすることが一番だと信じてやってきました。
本当は自分の意見を言うのが怖いだけ、否定されるのが怖いだけだったのに。
彼は普段から意見を主張しない私と独り相撲しているような感覚と、自分だけが早く結婚したいと思って焦っているのかという虚しさを抱えていたのです。
私は自分の意見を言うことが怖いということ、そして入籍に関しても言い出せなかったことを話しました。
その瞬間からようやく私たちはお互いの正直な気持ちを話すことが出来ました。
結局私たちは、お互いの顔色ばかりを気にして本当の家族にはなれていなかったんです。
ですがその瞬間、ようやく少しだけ、彼と今までとは違う絆で結ばれた気がしました。
少し冷めてしまった夕飯を食べると、彼はいったん外に出ました。
何か用事かな?と思っていると大きな荷物を抱えて戻ってきたのです。
それは大きな大きなクリスマスツリー。
4年前、付き合いだした頃のクリスマスに「いつか自分の家族と大きなクリスマスツリーの飾りつけをするのが夢。」と話していたのを、彼は覚えてくれていたのです。
涙が止まらない感覚を初めて味わいました。そして彼は言ってくれました。
「ずっとずっと一緒にいたい。早く家族になろう。」
彼からの2度目のプロポーズでした。
「うん、私も早く家族になりたい!」
ようやく彼はいつものような朗らかな笑顔を見せてくれました。
一緒にツリーに飾りつけをして、笑い合いながら婚姻届を埋め、ちょうど25日のクリスマスの日
私たちは本当の家族になりました。