プロポーズエピソード紹介集。優しすぎる彼からの彼らしいプロポーズ
私たちの出会いは職場でした。入社して初めて業務を教えてくれたのが彼。
職場の先輩というと頼りがいのある男性を想像してしまうけど、実際のところは全然そんなことなくて、かなり気弱な先輩だったんです。
業務を教えてくれる時も「指摘してごめんね。」から始まり、新入社員の私に対してすぐに「ほんとごめんね。」と言う先輩のことを、正直私は(いつも腰の低い先輩だなあ)くらいにしか思っていませんでした。
ある日の通勤途中、目の前には見慣れた背中がありました。(先輩だ、声かけようか)と思っていると先輩は小走りで走り出しました。
(あれ?誰かと待ち合わせかな?)
眺めていると、駅の階段を下っているおばあちゃんの荷物を先輩が持ってあげていたんです。
後ろから見える先輩の笑顔はめちゃくちゃ優しくて、私は一気に恋に落ちてしまいました。
強気な私は即告白。
「好きです!幸せにするので付き合ってください!」「僕で良ければ。」
なんだか男女逆転したような告白から、私たちの恋は始まりました。
それから2年。相変わらず先輩の気弱さは変わることなく、旅行を決めるのも私、デートの行き先も私、食事の店決めも私。
そんな私主導の関係でした。
そんなだから、プロポーズも私からかなーなんて思っていました。特にそれが嫌なわけでもなく、もはや私主導で動くのが当たり前になっていたんです。
とある日、週末のデート場所を考えていると、先輩が「次のデートは僕が決めるよ。」と言ってくれました。
珍しいこともあるんだなと思いながら、週末になりました。
当日は、車で自宅まで迎えに来てくれました。
「どこに行くの?」と聞く私に「内緒だよ」と笑う先輩。ワクワクしながらのドライブです。
駐車場に着き、車を降りてもまだどこにいるのか把握していませんでした。
息を吸い込むと自然の香りが胸いっぱいに広がります。
森の中の石段を登り、少し息が上がっている私に余裕そうな先輩が「頑張って」と声をかけてくれます。
なんだかいつもと逆になった気がして、私は歩くスピードを速めました。
やっと森を抜けると、ぽっかりと広がった広場。私たちの住んでいる町が一望出来る場所でした。
「すごーい」と感動していると「穴場なんだ。一度連れて来たくて。」と先輩は笑っていました。
うっとりと街を眺めていると、先輩がいきなり真面目な顔をしてこう言ったんです。
「僕は例えば大富豪になったり、外車に乗ったり、そんな生活が出来るような人間にはなれないと思う。でもきっとおじいちゃんになっても夜道は一人で歩かせないし、週末にはちょっとしたお花を贈るくらいなら出来ると思うんだ。それで満足してくれる?」
「私は先輩のそういうところが好き。だから先輩と一緒にいるんだよ?」と答えると、続けて先輩が言いました。
「絶対に大切にするから結婚してください。」
いきなりのプロポーズ。もちろん私の答えは
「はい。」
プロポーズも私からになると思っていたので、驚きと同時に嬉しさが溢れて涙がこぼれました。
先輩なりの、優しさあふれるプロポーズでした。