エピソード紹介集。カレー味のプロポーズ
大学生だった私。実家に住んでいたものの、週末になると年上の彼の家に泊まりに行っていました。
彼と一緒にいるのが嬉しくて、何をするわけでもなく、ずっとくっついて過ごしていた週末。
一緒にいられればそれで十分だったし、彼に変わってほしいところなんてひとつもなかった。
彼のヤキモチやきなところも、全部含めて彼なので何かを指摘したことはなかったし、彼も同じように私のことを思ってくれているのだと思っていました。
とある日、私の実家に田舎のおばあちゃんから大量に野菜が送られてきました。
消費しきれなかったため、彼の元にも持っていくことに。夕飯を二人で作ったりすることはほとんどなく、いつもどこかで外食して過ごしていた私たち。
何か料理を作ったら喜ぶかもしれないと思いつき、その週末は彼のためにカレーライスをつくることにしました。
実家暮らしで包丁を握ったことがほとんどなかった私は、カレーなんてもちろん小学校の実習でしか作ったことがありません。
それでも、彼女が作ってくれた料理なら彼はなんでも食べてくれるだろうという安易な考えだったんです。
いきなり台所を借りるというと彼は驚いて、「ここで作ってるの見ててもいい?」と聞いてきました。
料理なんてしたことないけれど、それでもきっとなんとかなる。失敗したって褒めてくれる。
そう思い込んでいた私は、彼の申し出を快諾して早速キッチンに立ちました。
「えっと・・まずどれから切ろうかな。」
人参、じゃがいも、玉ねぎ・・次々と野菜を切っていき、いっぺんにお鍋に入れようとしたところ、彼からのストップがかかりました。
「その野菜ぜんぶ入れるの?いっしょに?なんで?」と言う彼。
質問の意味もわからず野菜をまとめてお鍋に入れたところ、彼がため息をつきました。
「ねえ。カレーを作るときに、玉ねぎから炒めるって知らないの?飴色になるまで炒めるって知らないの?
そしたら甘くておいしいカレーになるって知らないの?」と立て続けに質問されました。
「・・・・知らなかった。」と答える私。楽しかったお料理モードは一気に失せて、テンションはがた落ち。
ですが、ショックだったのはその後の彼の一言。
「これじゃ嫁さんになれないよ。俺は料理上手なお嫁さんをもらうって昔から決めてるから。(笑)」
その言葉を聞いたとたん頭を殴られたような衝撃を受けて、気づいたら涙が一粒流れていました。
彼はいきなり泣きだした私を見て驚いていました。
「ごめん、冗談だよ!!一緒に作ろう?」
その後は、二人で玉ねぎを飴色になるまで炒めて、なんとかカレーは完成。
そんなことがあってから2年、同棲をしている私たち。
もうカレー作りも上手になったけれど・・私の中では2年前に言われた一言がどうしてもひっかかっていました。
そんなある日カレーを作っていると、彼からいきなり「お願いがあるんだけど。」と言われました。
「何?」
「俺のためだけにカレーを作ってくれないかな?」
突然のお願いに、私はきょとんとして「え?いつも作ってるじゃん。」と返してしまいました。
「えーっと、つまり、俺と結婚してくださいってこと・・。」
驚きすぎて持っていたお玉を落としてしまいました。
ずっと気にしていた料理のこと、彼もきっと同じように気にしていてくれたんだと思います。
だからってプロポーズの言葉までカレーにしなくてもいいのに(笑)
いつか彼の大好物になれるようこれからもおいしいカレーを作れるように頑張ります。